薬局での24時間対応について、課題や転職する際の注意点を解説
2024.05.31
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近年、ライフスタイルの多様化や法改正により、24時間対応の薬局が増加しています。自分に合った働き方を模索する中で、このような薬局への転職を考える方も増えているのではないでしょうか。
この記事では、24時間対応の薬局が増えている背景や、その働くことで得られるメリット、転職時に注意すべき点などを見ていきます。
目次
薬局での24時間対応とは?
24時間対応の薬局は大きく2つに分けられます。
- 薬剤師が24時間店舗に常駐している薬局。
- 営業時間終了後も電話などで薬剤師が個別に患者対応を行う薬局(夜間に調剤のため薬局へ出向いた場合などを含む)。
24時間対応が重要性を増す背景
24時間対応の薬局が広がりをみせる背景には、かかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算の要件として、薬局の24時間対応が明文化された影響があります。
かかりつけ薬剤師指導料は、対物から対人業務(患者さま本位)への体系見直しが議論された結果、2016年度の調剤報酬改定から始まりました。地域包括ケアシステムにおいて、より薬局や薬剤師が地域密着型へのシフトを目的に推進されています。
地域支援体制加算は、薬局・薬剤師が地域医療へさらに貢献することを目的として2018年度に新設され、2020年度の調剤報酬改定では、提供した医療の実績によって加算されるしくみに変更となりました。
いずれも薬局や薬剤師に患者さま本位の業務を期待するものとなり、算定するためには、24時間体制で相談に応じることが要件とされています。
また、かかりつけ薬局・薬剤師として患者さまに選ばれるためには、処方箋が来るのを待つ受け身の対応では不十分です。患者さまの多様化するニーズに対応し、近隣の薬局と差別化を図る必要があるでしょう。
このような背景から、24時間対応の薬局が徐々に増えつつあるのです。
24時間対応のメリット
薬局が24時間体制で対応することは、薬局の経営者にとっても薬剤師にとっても簡単なものではありません。しかし、薬局の収益増加や患者さまからの信頼獲得など、大きなメリットも期待できます。
経営者側のメリット
■薬局の収益増加が期待できる
24時間対応に加え、所定の条件を満たせば、かかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算を算定可能です。
令和2年度の診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料が76点、地域支援体制加算が38点となっており、プラスの収益が見込めるでしょう。
薬剤師側のメリット
■個人への手当がつく
薬局によって内訳や金額は様々ですが、夜間の対応を行うと手当がつく場合があります。たとえば、夜間に調剤のため薬局へ出向いた場合の手当や、深夜に店舗に常駐する場合の手当などが考えられます。また、そもそも24時間常駐の薬局で働こうとする薬剤師は少ないため、最初から給与が高めに設定されていることもあります。
■スキルアップや後々のキャリアアップにつながる
昨今の転職市場では、かかりつけ薬剤師や在宅医療の経験が高く評価される傾向があります。さらに、人手の少ない夜間帯に患者さまの対応を任せられる薬剤師は、どの職場でも重宝されるでしょう。スキルアップや転職、キャリアアップを考えた際に有利になる経験と考えられます。
■患者さまからの信頼を得られる
24時間いつでも相談に対応してくれる薬局があることは、患者さまにとって大きな安心感につながります。信頼獲得ができればかかりつけ薬剤師として、患者さまの継続的な健康サポートに寄与できるため、薬剤師としてやりがいを感じられる経験となるでしょう。
24時間対応の課題
薬剤師が24時間対応できる薬局は、薬局の経営にとっても患者さまにとっても様々なメリットがありますが、一方でコストや人材確保の面などで課題が存在します。具体的にみていきましょう。
経営者側の課題
■人材確保が難しい
24時間常駐のためには、当然ながらその分多くの薬剤師を採用しなければなりません。また、電話対応でも緊急対応が必要な患者さまに対しすぐに動けるかどうかも重要です。しかし、なかなか条件に合う薬剤師が確保できず、マンパワー不足に陥っている薬局も少なくありません。特に薬剤師が不足している地域では、24時間常駐対応を検討しても人員確保が課題で実現できないことも考えられます。
■一定のコストがかかる
夜間は賃金の割り増しや手当の加算などで、通常よりも多くの人件費が必要になります。また、24時間常駐の場合、夜間に安心して店舗を開けておくためには、2人以上の勤務(事務員も含む)や強化ガラスの窓への変更、警備員の配置などセキュリティの強化も検討する必要があります。
薬剤師側の課題
■特定の薬剤師に業務負担が集中する可能性がある
夜間に薬剤師を何人も薬局に常駐待機させるのは、人件費の関係から現実的ではありません。このような場合には、基本的には薬剤師は1人か多くても2人で、事務員不在で対応することにもなるでしょう。そのため薬剤師としての通常業務はもちろん、普段は調剤事務が担当するレセコンの入力なども行う必要があります。
また、夜間の電話対応は1人の薬剤師が担当するのが普通であり、患者さまの様々な要望や問い合わせなどに迅速かつ的確に対応する経験や能力が求められます。担当薬剤師の判断によっては、夜間対応医療機関の受診勧告や調剤のためなどで薬局へ出向くことも必要となるでしょう。すなわち、調剤事務を含めてすべてを問題なくこなせる経験やスキルのある薬剤師に夜間業務が集中してしまう可能性があると考えられます。また、患者さまの相談に対しては昼夜を問わずかかりつけ薬剤師のみが対応すると思われていますが、かかりつけ薬剤師以外が夜間の相談に応じる場合があることをあらかじめ患者さまに説明し、代わりの薬剤師の連絡先を伝えておけば、かかりつけ薬剤師でなくても対応可能です。しかしながら、かかりつけ薬剤師になっている方に夜間対応の負担がかかるケースも少なくないでしょう。
■近隣の医療機関との連携
緊急時にもすぐに必要な対応が取れるよう、患者さまの服用薬や現在の状態などを把握しておく必要があります。また、緊急時には夜間でもスムーズに受診を促せる体制を整える必要があります。そのためには、普段から近隣の医療機関との連携が欠かせません。地域一体でチームとなり、患者さまを守っていく意識がますます重要になるでしょう。
24時間対応の薬局へ転職する際に確認すべきポイント
前述の通り、24時間対応の薬局にはメリットとデメリットがあります。自身にとって働きやすい環境の薬局を見つけるためには、事前に確認しておくべきポイントがあります。以下に、そのポイントを示します
マニュアルなど体制構築の環境が整っているか確認
24時間対応薬局のマニュアルに関するガイドラインが公表されていないことは残念ですが、事前に確認しておくべきルールやポイントはいくつかあります。以下に、夜間対応を行う薬局で確認すべきルールやポイントを示します:
- トラブルが起きた際の対応ルール:夜間にトラブルが発生した場合の対応手順や連絡先、報告方法などがマニュアル化されているか確認します。
- 調剤のために夜間に薬局へ出向く際のルール:夜間に薬局へ出向く場合の手続きや安全確保のためのルールが明確に定められているかを確認します。
- 近隣の医療機関や行政などの連絡先リスト:緊急時に必要な連絡先や情報源がまとめられているかを確認します。医療機関や行政機関などとの連携体制が整っているかも重要です。
- 鍵の扱いや防犯対策:夜間にはセキュリティ面でのリスクが高まるため、鍵の管理や防犯対策がしっかりとされているかを確認します。
これらのルールやポイントが、薬局の夜間対応におけるスムーズな運営や安全確保に貢献します。事前に確認しておくことで、夜間の業務に対する準備や対応がより円滑に行われるでしょう。
手当について確認する
確かに、夜間に自宅から薬局まで出向いて調剤を行った場合の手当や、薬局に常駐する場合の各種手当の有無や内訳は事前に確認しておくことが重要です。特に、深夜割り増し手当や夜間対応の手当などがどのように適用されるかを把握しておくと、自身の給与や労働条件をより正確に把握できます。
もし自分で情報を収集しても十分な情報が得られない場合は、転職コンサルタントを利用して相談することも一つの方法です。転職コンサルタントは、業界や職場の情報に詳しく、自身の希望や条件に合った転職先を見つける手助けをしてくれます。経験豊富なコンサルタントが、適切なアドバイスや情報提供を行ってくれるでしょう。
同僚となる薬剤師の人数や経験年数を確認
夜間の対応やかかりつけ薬剤師となるには、基本的に3年以上の経験が必要です。そのため、勤務経験が浅い薬剤師が多い職場の場合、自身が3年以上の経験者であれば業務負荷が大きくなる可能性があります。
可能な限り店舗見学を行い、薬剤師の人数や勤務経験年数を確認してみることをおすすめします。また、転職コンサルタントに薬局の状況を確認してみるのも良いでしょう。転職コンサルタントは、あなたの経験や希望に合った職場を見つける手助けをしてくれます。経験の浅い薬剤師が業務負荷を適切に処理できる環境かどうかを見極めるために、転職コンサルタントのアドバイスを受けることも有益です。
24時間営業の場合、休憩できるスペースがあるか確認
夜間は集中力も低下しやすく、そのまま業務にあたると患者さまを危険にさらす恐れもあります。必要な場合は仮眠が取れるスペースがあるかなども事前に確認できると安心です。夜間の勤務では、十分な睡眠や休息が確保されることが重要です。そのため、転職先を探す際には、夜間に仮眠を取るための専用スペースが用意されているかどうかも確認しておくと良いでしょう。安全かつ効果的な業務遂行のために、十分な休息が取れる環境が整っていることが重要です。